この記事は
- 盗作/ヨルシカの詳しい解説が知りたい
- 盗作がどのように作られているか知りたい
- この詞がなぜ響くのか知りたい
方に向けて書いています。
個人的に今後数年巡り会えない名曲
突然ですが、あなたは何のために音楽を聴きますか?
気持ちを上げたいとき、泣きたいとき、リラックスしたいとき。。
様々な理由があると思いますが、僕が音楽を聴く理由は上記のことを総称して、
感動したいとき
だと思っています。
僕の行動原理、価値観、大事なことは「感動し、感動してもらうことで人生を輝かせていくこと」であることがこの本からわかったためです。
それでこういったブログをやっているのですが、ふとサブスクの音楽をいつものように聴いていたところ、この「盗作/ヨルシカ」という今後数年現れないであろう名曲に出会いました。
この歌詞に涙が止まらないのはなぜか。
なぜこの曲は「盗作」なのか?
今日はそれを様々な角度で分析していきたいと思います。
歌詞について
「音楽」というキーワード
まずはやはり歌詞です。
「音楽の切っ掛けは何だっけ。
父の持つレコードだったかな。
音を聴くだけなら努力もいらない。盗作/ヨルシカ
ヨルシカの曲は度々「音楽」という言葉が使われます。
作詞作曲をしているn-bunaさんの本当に思っていることが常々歌詞にされている感じがします。
「音を聴くだけなら努力もいらない。」
刺さります。本当に聴くだけなら楽なもの。ただし演奏する側や、作る側になると本当に苦労をします。
知らなければよかったと思うことは僕にもたくさんあります。
この歌詞が、「」で始まっているのもn-bunaさんの実声なのかもしれません。
学ぶ=真似ぶ=盗む
この歌が僕の物になれば、この穴は埋まるだろうか。
だから、僕は盗んだ。」盗作/ヨルシカ
音楽をすると、あらゆることにおいて自分が劣っているようにみえる時期があります。
録音したものは自己嫌悪発生装置だし、作るものはダサいし。。
音楽だけじゃなくって、人生において、完全に満たされることなんてなくて、
どこか自分は欠陥で、他人に比べて劣っていると劣等感を抱くことはあるでしょう。
それを埋める方法。それが「盗む」ということです。
人は誰しもあらゆるものを盗んで生きています。
学ぶ=真似ぶ=盗むです。
米津玄師だって、羽生結弦だって、大谷翔平だって、いろいろなことを真似て、盗んで、努力して今の栄誉を掴んだのです。
しかしながら、その盗作の山で掴んだ栄誉があったとしても、人は満たされることはいつまでもないのです。
欠けたものへの渇望
嗚呼、まだ足りない。全部足りない。
何ひとつも満たされない。
このまま一人じゃ僕は生きられない。
もっと知りたい。愛を知りたい。
この心を満たすくらい美しいものを知りたい。盗作/ヨルシカ
サビの歌詞です。
あれだけ盗んだのに、「足りない」。そして「知りたい」。
心にぽっかりと空いた穴。それが何なのかわからない。
人間皆そういった穴と生きている。
そしてそれが何なのか知りたい。
たくさん盗んだのに。何一つも満たされない。
多くの人は、恋人とか、家族とか。
そういった外的なもので心に折り合いをつけ、その穴を埋めていく。
でも、一旦作る側になってしまった人間は、もうそれでは穴が埋められないのです。
そんな思いが、ギターのシーケンスフレーズに乗せて畳み掛けられます。
花職人
ある時に、街を流れる歌が僕の曲だってことに気が付いた。
売れたなんて当たり前さ。
名作を盗んだものだからさぁ!盗作/ヨルシカ
秘密の悪巧みのようにコロコロ笑うようなピアノのフレーズとともに語られる真実。
しかしながら今の音楽なんてみな過去作品の焼き直しで、いわばアーティストではなく花職人みたいなもの。
そんなことを感じさせます。
花職人についてはこちら。
この記事は ミュージシャンとアーティストの違いが知りたい 音楽番組で「アーティスト」と呼ぶのに違和感を感じる アーティストになりたい という方に向けて書いています。 […]
いつか現れる終わり
化けの皮なんていつか剥がれる。
見向きもされない夜が来る。
その時に見られる景色が心底楽しみで。盗作/ヨルシカ
音楽業界は闇です。
曲を量産させられた後に捨てられます。きっと今も納期に追われているでしょう。
しかし金にならなくなって大衆からも忘れられ、そんな時に何が残るだろう。
一旦すべてを失った小室哲哉の観た景色はどんなだったろう。
それはきっと儚いものだから、その日まで僕は作り=盗み続けるしかない。
まだ足りない。
まだ足りない。まだ足りない。
まだ足りない。まだ足りない。
まだ足りない。僕は足りない。
ずっと足りないものがわからない。
まだ足りない。もっと知りたい。
この身体を溶かすくらい美しい夜を知りたい。盗作/ヨルシカ
最後に「足りない」がギターのシーケンスフレーズとともに畳み掛けられます。
気づくと涙がこぼれている人もいるでしょう。
「ずっと足りないものがわからない。」
だから盗まずにいられない。
もうこれは、作家病といってもいいでしょう。
僕の行動原理「感動したいし、させたい。」
これをここまで具現化した歌詞に、心底感動いたしました。
楽曲のつくり
構成
Tempo = about 100
Key=D♭
音域=1.0〜1.5oct
16ビートシャッフルです。
ギターでいうとアップピッキングでノリが左右される難しいリズムです。
Aメロ | 4bar + 4bar |
Bメロ | 4bar + (1bar) |
サビ | 4bar + 4bar |
Aメロ&Bメロ
最初は、Aメロから直サビに行くパターンかと解釈したんですが、Aメロの後半をBメロとすることにしました。
メロディー
五度(sol)始まりで、D♭Major Pentatonicを軸に作られています。
4小節目に七度の音(Ti)も使われていたり、8小節目に四度(Fa)の音も使われているので、D♭ Major Scaleとも言えるわけですが、
この2つの音は要所要所に使っているイメージで、基本はやはりPentatonicとして捉えるほうがよいでしょう。
歌メロは基本Pentatonicを軸にするのが基本です。
コード
コードはとてもシンプルです。
V-♭VIdim-Vimは頻出するコード進行です。V-III7-VImも似たような感じです。
BメロのIV-I/III-♭III。ルートが半音下降するクリシェ。最終的にIImに落ち着く。♭IIIはマイナーキーからの借用か、或いはIImに解決する7thコードの裏コードと解釈できます。
その他
最初のほうのピアノは3度抜きのコードをスタッカートで刻む感じです。
ベースはAメロはなしでピアノの低音にまかせ、Bメロから入ります。
エレキギターはL側では単音シャッフルフレーズ。R側はコードカッティング。
サビ手前で入るアコギのフレーズ(MI-Do-Ti-Sol-Mi)がよいですね。
サビ
メロディー
こちらもやはりD♭ Major Pentatonicが主体です。
しかしながら最後の2barがやはりD♭ Major Scale です。
4度や7度の音というのは要のところで使い、サビ頭はPentatonicでダイナミックに行くというのがn-buna三流の作曲方なんでしょうか。
コード
この曲はとことんコードがシンプルです。
というのも名曲というのはコード進行が決まっていて。
今回IV-V-Iみたいな進行は超王道です。
それだけこの歌で届けたいのは、和声的美しさより「言葉」であるといえます。
歌の終わりがIではなくVImで暗い終わり方をするのも「美しい夜が知りたい」に合わせてのものでしょう。
その他
このIV-V-Iという進行のときに流れるギターのシーケンスフレーズ。
この音(Sol-Mi-La-Miの繰り返し)は、どのコードのアボイドとも外れており、コードトーンでなくてもテンションになるため、うまくハマります。ナイスアレンジ。
オクターブレイヤーされることでよりラインが強調され、たたみ掛けられる歌詞にもすごくマッチしています。
この歌が響く人
基本的に、物を作る側の人間になった人にはかなり刺さる歌詞です。
クリエイターに贈る歌詞ですね。
しかしながら、人は小さなころからたくさんのことを真似て=盗んで生きています。
大人になった今もきっとそれは変わらないでしょう。
劣等感とか、妬みとか。
どうして自分にはできないんだろうとか。
思うんです。
人生とは「普通の人」になる旅だな。と。
人は何かしら心に穴を持ちます。だからクリエイターでなくても刺さる。
そこをうまく付いてくる名曲といえるでしょう。
つくってみた
というわけで毎度の作曲です。
盗作の盗作です。
ちょっといろんな方面から真似しすぎて、完全なるパチもんになってしまいました。
少しリファレンスする要素を変えないといけないですね。
次回より以下の軸でやってみたいと思います。
- 雰囲気(明るい暗い)
- 方向性(元気、切ない)
- テンポ感
- メロディー感(譜割りの大きさ)
- サウンド感(デジタル、生)
参考にしたのは以下の書籍です。迷いが発生したら常に読み返したい激励本です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ちょっと熱量のこもった記事になってしまいました。
それだけ僕は名曲だと思っています。
いつか僕もこんなメロディーと言葉が書けるようになりたい。
今は盗むことしかできないけど、いつかそれを消化して自分の言葉でできるようになりたい。
ブログでは最近「自分の言葉」で書けていると思う。
それはやっぱりたくさんの「盗み」とアウトプットがあったから。
だから今日も僕は作るのです。