劇場版ヴァイオレットエヴァーガーデン感想と考察

この記事は

  • 劇場版ヴァイオレットエヴァーガーデンの感想がみたい
  • なぜこの作品が胸を打つのか知りたい
  • ひと味違った感想が観たい

方に向けて書いています。

 

※以下、ネタバレを含みますので未見の方はご遠慮ください。

 

 

冒頭10分が特別公開!(2020年10月10日追記)

冒頭10分で号泣できると話題の本作ですが、その部分が特別公開されました!

ただ、ここで号泣できるのはTV版をしっかりと見ただと思います。

 

この作品を感動をしっかりと受け取りたいのであれば、TV版および外伝をしっかりと観てからをオススメします。

この記事についても、未見の方はここで閉じていただいたほうがよいです。

 

 

 

2020年9月公開

あの京都アニメーションでの凄惨な事件から一年、ついに公開となりました。

 

一度は公開を断念せざるを得ないところまで陥りそうになったものの、この日を迎えられたのは制作陣の強い思いである。

 

と石立監督は舞台挨拶で少し声を震わせながら語っていました。

 

 

京都アニメーションのファンはこの日を待ちわびたことだろうし、僕のSNSタイムライン上でも各所で話題になっていました。

 

僕自身もアニメーションが大好きです。

 

その理由は単純に綺麗なものが好きだし、

なんというか実写の様々な事務所や芸能的な影響力みたいなものよりも、作品の「伝えたい思い」みたいなものが統一されている気がしているからだと思うんですよね。

 

京都アニメーションを初めて意識したのは、「聲の形」からだと思います。

あの作品の圧倒的な映像美、キャラクターの表情の繊細さに感銘を受けたのを覚えています。

 

 

TV版、外伝からの集大成

そして今作。

 

僕はテレビ版も外伝もおさらいをせずに観に行きました。

ほぼ前情報もなしの状態です。

 

なので、こういった結末になるとは予想だにしていませんでした。

 

あの少佐が生きていたなんて。

そして50年以上先の未来からの視点で描くなんて。

 

これまでのヴァイオレット・エヴァーガーデンで描かれていた、琴線に触れる何かをしっかりと踏襲し、かつ物語を完全に終わらせることを見事にやってくれました。

 

 

本当に美しいものとは?

ヴァイオレットという女性をどう描けば一番美しいか?

 

それを考えたときに、彼女が人生を終えたあとから描く。

この手法が一番美しく、人間の儚さを描けるし完結としてふさわしい。

 

そう制作は考えたんだと思うんです。

 

そのために、TV版10話のアンが生涯を全うした後の世界、

アンの孫目線で話が進むという形にしたんだと思います。

 

TV版10話ダイジェストはこちら↓

 

 

個人的にこのアニメははたからすると少し異様です。

アニメなど全く興味がない人からすると、

 

  • アニヲタが好きそうな女性が義手して
  • 代筆屋の女性をわざわざ「自動手記人形サービス”ドール”」と呼んで
  • 戦争時代に子供の売買まで行われている

 

 

嫌悪感を抱かれかねないのです。

しかしながら実際に見てみると、大人のほうがみていて自然と涙が流れる作品です。

 

いや、いろいろ言ってごめんなさいって言うくらい大人のほうがグッとくる作品になっているのです。

実際、劇場にはご年配の方がたくさんいました。

 

上記のような設定や絵の、うがった見た目を外したときにこの作品から出てくるもの。

それは命の儚さだと思います。

 

 

命を丁寧に描くこと

話の大筋は戦争で亡くなったであろうギルベルトが遺した、「愛している」の言葉の意味を探す女性の話で、これも命を取り扱っています。

 

しかしながら手紙代筆という職業の中で彼女は、自分とは別の、他人の人生や命に深く関わることになります。

 

本作品にも、(おそらく)小児がんか何かで亡くなる少年が出てきます。

彼が弱っていく、痩せていく描写も繊細に描かれます。

 

自分の死期がわかったときに、何を残したいか?何を伝えたいか?

その2つが叶えられる「手紙」を通じて、彼女が「愛してる」を学んでいきます。。

 

これが人生のステージが上にいくほど胸を打つんだと思います。

 

 

最後に描かれたのは一人の女性の人生だった

この物語は、彼女がドールを辞め、(生きていて島で先生をしていた)ギルベルトとの人生を選ぶことで幕を閉じます。

 

おそらくそれだけだったらここまで傑作にはならなかった。

それを現代視点から描いたことにより、「人生」、「命」、そして「愛」というテーマをより深く伝えることができているんだと思います。

 

人身売買により買われ軍人となり、それでも愛を教えてくれる人と出会い、ドールの仕事を通じて愛を理解していく。

行き着いた先は、戦争で親を失った子どもたちの手紙を代筆すること。

 

これまで多くの人の生涯や命に深く関わった「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。

最後に描かれていたのは彼女自身の人生だったのです。

 

愛を知った彼女は愛を与える人になれたのでしょう。

(このブログで常々言っている、消費者でなく生産者に彼女はなったのだと思います。)

 

幸せな人生は、人にどれだけ「ありがとう」を与えることができるか。

彼女の人生から改めて学ばせていただきました。

 

結果その功績として彼女は切手のデザインとなり、後世に語り継がれるようになったのでした。

 

 

京都アニメーションの作画力

京都アニメーションといえば、安定の作画力です。

 

今回も細かい描写、背景、雨のしずく、たゆたう波、月夜に浮かぶキャラクターの色彩、義手のハイライトまで本当にキレイに描かれています。

本当に人を感動させるものってこういうのを言うんだろうなと思います。

 

 

逆に言えば、TV版が既に映画並にキレイであるということに驚かされます。

実際、映画でもTV版のシーンが流用されているところがあります。

 

それが、映画内で使われたとしても遜色がないってすごいことですよね。

もちろん、映画版のほうではさらに素晴らしい映像表現があって。

 

今回は雨や海などの、水の描写がとんでもなくキレイです。

このあたりの映像美は、正直今後も新海誠さんに敵うところはないだろうなと思っていたんですが。

 

これは凄い。

思えばTV版の7話で湖を飛ぶヴァイオレットの描写でも大変美しい水の描写が描かれていました。

 

今回はこのさらに上をいく映像美です。

 

 

Evan Callさんの透き通る劇伴

当ブログは、主にDTMやバンド、ギターのことを取り扱うブログなので、音楽にもふれておきたいのです。

 

聲の形もそうですが、京都アニメーションの繊細な映像には繊細な音楽が必要です。

TV版からバークリー音大を出ているEvan Callさんの劇伴が秀逸すぎて、よくアルバムを聴いています。

 

普段Rockばかりやっているので、エッジのない弱めのタッチで弾かれるピアノの繊細さに驚きます。

そしてEvan Callさんの作るメロディーがどこか懐かしさを感じさせるテイストで、中世のような世界観にマッチしています。

 

今回もEvan Callさんの素晴らしい劇伴が物語を美しく演出しています。

さらに、主題歌などの作曲、編曲もEvan Callさんが携わっています。

 

「みちしるべ」の流しどころ

ヴァイオレット・エヴァーガーデンで聴きたい、号泣ソングはやっぱり芽原実里さんの「みちしるべ」だと思うんです。

というのもTV版から、繊細なタイトルバックとピアノの余韻で終わる演出から流れるアカペラが毎度の号泣ポイントだからです。

この曲については以下の記事で徹底考察しました。

あわせて読みたい

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パブロフの犬のごとく、あの曲を聴くとともう泣いてしまう。

それが本作位でも本当にいいシーンで使われています。

 

通常、歌モノを劇伴としては使わないと音響監督である鶴岡さんは、サウンド&レコーディングマガジンの中でインタビューに答えています。

 

ですがやはりあのシーンでは、この曲の展開部分の歌詞がグッとささる。

ここで歌詞をみてみると。

 

※歌詞は著作権保護のため一部のみ記載

授けられた翼を (中略) ひとりじゃない

みちしるべ/作詞:茅原実里

 

 

船から飛ぶヴァイオレットの描写に深くシンクロするのです。

鶴岡さんが音響監督という立場で、監督に曲を提言することはもうないだろうとおっしゃっていました。

 

そして、このシーンの「みちしるべ」はおそらく新しくレコーディングされており、

編曲をEcan Callさんが担当しているんですよね。

 

構成が、1コーラス⇛オーケストラの間奏1⇛展開⇛オーケストラ間奏2⇛大サビ⇛Verseという特殊構成になっています。

Verse(Aメロ) ヴァイオレットの手紙を読むギルベルト
Chorus(サビ) 最後の一文に走り出すギルベルト
オーケストラ間奏1 呼び止めに走るギルベルト
Bridge(展開) ギルベルトの声に呼ばれ船からダイブするヴァイオレット
オーケストラ間奏2 海に落ち陸に向かうヴァイオレットと海に向かうギルベルト
Big Chorus(大サビ)
Ending 向き合う二人

 

ギルベルトが全力疾走する部分が間奏1で、ヴァイオレットのダイブが展開、その後の間奏2でもう涙がとまりません。

涙にはやはり弦です。

 

このシーンにぴったりハマるよう作ったEvan Callさんのアレンジが強烈にいいです。

もともとのアレンジの泣き所である、「願いはひとつだけあなたの幸せ」部分の

 

  • ストリングス駆け上がり
  • 泣きのコード進行「VIm-V-#IVm7♭5」

 

はしっかり踏襲されており、

 

劇伴として最高の仕上がりとなっています。

 

極めつけはラストの歌詞が冒頭のものに変更&Verseの後半4小節がカットされ、「みーちーしーーーーるべー」と前半が長くなっていることです。

名前の (中略) 明日を探して

みちしるべ/作詞:茅原実里

 

この部分は言わば後日談的な歌詞なので、このシーンにはあまりそぐわない。

しかし後半4小節を切って前半だけで終わるのは不自然。

 

よって「し」を伸ばすことでしっかりと終わらせています。

 

全体を通して、茅原さんの歌い方もTVバージョンよりも少しばかり抑揚が付加されていて、

ヴァイオレットが「愛」を知り「人」として目覚めたように歌い上げています。

 

「ああ、本当に終わるんだなぁ」と感慨深く聴きながらあふれる涙が止まりませんでした。

 

たぶん、こんな素敵な劇伴に出会えることは今後数十年ないかもしれません。

 

 

 

主題歌 WILL/TRUEについて

TV版での主題歌を担当しているTRUEさんが、今回も主題歌を担当しています。

 

今回は映画のエンドロールで流れる曲ということで、TV版OPよりも柔らかい歌いまわしで始まり、壮大な物語の終幕としてふさわしいダイナミックさも兼ね備える素晴らしい曲だと思いました。

 

作曲とアレンジは劇伴同様、Evan Callさんで壮大なオーケストラアレンジとなっています。

作詞はTRUEさんご自身ですね。作家名としては「唐沢美帆」名義ですね。

 

舞台挨拶で、TRUEさんが

ヴァイオレットは強く、そして美しい女性。その彼女の人生を包み込むような暖かい楽曲にしたかった。

 

とおっしゃっていました。(ちょっと正確ではないかもしれませんが)

 

歌詞をみてみると映画のキーワードがいくつか使われています。

歌詞全文サイトと、この記事の切替が瞬時にできずに読みづらいのですが

 

※歌詞は著作権保護のため一部のみ引用

明日を 伝えて おなじ空 指切りしよう

WILL 作詞:唐沢美帆

 

喜び 悲しみ ”あいしてる”と 書いた手紙 風に揺れる

WILL 作詞:唐沢美帆

 

舞台挨拶で石立監督が、ヴァイオレットの手紙の最後の行をセリフに載せなかったとおっしゃっていました。

その一行にギルベルトを走らせる大きな要因があったとも。

 

そのセリフは考察してほしいようなことを監督は言っていたんですが。

TRUEさんは映画の台本を持っていて、台本にはしっかり書いてあったそうです。

 

その言葉が何であれ、たぶん伝えたいことは上記の歌詞に反映されているんだと思います。

愛を知らなかった人間の成長と感謝の言葉を。

 

また、歌い出しからみてみると。

 

花はやがて (中略) 育てていくのでしょう

WILL 作詞:唐沢美帆

 

帰ろうか (中略) 生きていく

WILL 作詞:唐沢美帆

 

Verse(Aメロ)の始まりの言葉から、やはりこの作品が「命」をテーマにしていることがわかります。

人はいつかきっともと来た場所(土)に還り、新たな生命となることも。

 

その中で、もうひとつのテーマである「人生」をかけたときに。

やはり最愛の人と生きていくというのが、あるべき姿なのだと。

 

そんなふうに僕は受け取りました。

 

 

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ひとつだけ気になった

ひとつだけ気になったのですが、ヴァイオレットがブーゲンビリア母のお墓参りでリボンを落としたあと、

ユリスのくだりのシーンでリボンがされていたことです。

 

まあ変わりのリボンをつけたと解釈すればいいだけなのですが、ないほうが自然だったかなぁ。

あれは所謂ミスなのかなぁとか。少し考えてしまいましたが、それでこの作品の評価が下がるわけではないですね。

 

 

TV版をおさらい

映画版を見たら、もう一度TV版からおさらいして再び劇場へいきましょう!

 

現在サブスクで見られるところはNETFLIXのみのようです。

応援という意味でブルーレイ買ってもいいと思います。

 

 

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

 

絶賛、ヴァイオレットロス中ですが、

この物語はきっとこの先何十年も、人の心を暖め続ける「みちしるべ」となるでしょう。

ブロガー的に「泣けるアニメ」で検索したら、ずっと上位に居続ける作品になるのではないでしょうか?

 

僕たちは、戦争のない平和な時代に生まれました。

 

だけども、9.11で人間の恐ろしさを知り、3.11で自然の恐ろしさを知り、

放火事件で憎悪の恐ろしさを知り、そして今、ウイルスの恐ろしさと戦っています。

 

その中でも、人の大切さや儚さを表現する仕事にとても感動しました。

僕も「感動し、感動してもらうことで人生を輝かせていく」ことをテーマに生きています。

 

いつかこんな仕事がしたい。

そう強く思いました。

 

 

 

くどしゅん
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