この記事は
- TVアニメ「かげきしょうじょ!!」のOP曲が知りたい
- 「星のオーケストラ/saji」がどのように作られているか知りたい
方に向けて書いています。
TVアニメ「かげきしょうじょ!!」
2021年7月クールにて放送されたTVアニメ「かげきしょうじょ!!」。
歌劇団を目指す少女たちの奮闘の物語のようですね。
(おそらく宝○なんだと思います。)
絵のタッチも少女漫画ライクなため、ちょっと男性には不向きかなぁと思いつつ、音楽が関係するためチェックしていたんですが。
これがおもしろい!
主人公の渡辺さらさがなんかかわいいのです。
(とくに朝の髪爆発が)
もう一人の主人公である、奈良田愛が元JPX48所属ということで、
なんか秋元康っぽい人も出てきて笑ってしまいました。失礼。。
OP曲「星のオーケストラ」
OP曲を担当するのはsajiというバンドさん。
アニメを視聴していて、編曲欄に河合英嗣さんのお名前を発見して、なんか聴いたことあるなぁ。と。
で調べてみたら元BIIRの方ではないですか。
筆者がギタリストの小僧だった際(今も小僧ですが)に、相方である大橋ヒカルさんのバックで演奏させていただいたことがあります。
河合さんにはお会いしたことはありませんが、クレジット表記で見かけたのも何かの縁。
今日はこの「星のオーケストラ」の分析をしたいと思います。
メロディー&コード分析
イントロ
印象
音色から、「夜空」のような印象を持ちました。
タイトルが「星のオーケストラ」だからでしょうか。
静かな夜に星が瞬いているイメージですね。それが「光り始める」。
最初の4小節はそのようなイメージで、その後は「ワクワク」や「切なさ」みたいな印象に変わります。
そして歌に向かって「駆け抜ける」や「ほろ苦さ」みたいなものも感じました。
そういったすべての感情を最後の小節で「まとめる」という感じです。
どんなふうに感じたかを書き留めておくことはとても重要なんだよ。
分析結果
イントロは3小節3/4拍子でそのあと1小節が6/4拍子になる感じですね。その後は4/4小節です。
ドラムのフィルが始まる前の、ギターのバイーンが好きですw
「夜空」の正体は、音色によるものでしょうね。ベル系のサウンドと、スタッカートかピチカートっぽいストリングスがそのような雰囲気を醸し出しています。
ドラムのハイハット的な金物やピアノのグリッサンドにより「光り始める」印象。
そしてビートがスネアから始まるリズムであるため、前のめりな感じが「ワクワク」の正体でしょうね。
「切なさ」の正体はセカンダリードミナント。B♭-E♭mの動きがその感情を誘います。
コードの展開が1小節単位に変わる9小節目が、流しているようなところから「駆け抜ける」という感じでしょうか。
最後の「ほろ苦さ」が短調からの借用IVmによる独特の暗さがそれを演出していることがわかります。
Aメロ
印象
Aメロは長く、16小節で構成されています。
最初は「穏やか」な印象を持ちました。
5小節目からは「日常」のような、少し退屈なイメージ。
それが8小節目で「変わり始める」。
8小節目からは「新しい日常が始まる」。渡辺さらさが学校に通い始めるイメージですね。
その後は「新しい仲間と」「動き出す」というような物語に沿ったイメージとなりました。
分析結果
ドラムがBDとHHのみになるので「穏やか」になったのでしょうね。
このアレンジは、物語が始まる準備運動的なイメージが強いですが、ボーカルのやさしい声も相まってそのような印象になったのでしょう。
そんな中にもB♭7/D-E♭mというセカンダリードミナントをさりげなく入れてたり、
5小節目のIVにつなげる♭VII-Iというマイナーからの借用進行も入っているところがミソですね。
筆者の場合は、Vm-I-IVという進行をよく使いますが、♭VII-I-IVというのもストックしておきたいです。
「変わり始める」の正体もマイナーからの借用の♭VI-♭VIIですね。
これはIにつなげるための進行ですが、非常によく使われます。IV-V-♭VI-♭VII-Iとか。
しかし調が異なるため、「変わり始める」という印象になるのです。
その後は、ビートが8ビートに切り替わるために「新しい日常が始まる」となったと言って良いでしょう。
「新しい仲間と」の部分、ルートがFa-Miと動きますが、IV-IIImとはならずIV-I/IIIとしている部分。
IIImにすると、少し暗くなってしまうためそれを回避するためにI/IIIにしています。
それによってポジティブな「新しい仲間」という印象となったのですね。
最後のD♭sus4としたのは、歌メロがRe-Do-Re–Do–となるからだと思います。
DoはV7だとアボイドなのでsus4にすることで回避しています。
メロディーはマイナーペンタで繊細に動く部分もありますが、多くはG♭メジャーペンタでダイナミックに動きます。
わかりやすい、歌いやすいメロディーです。
一点だけ、8小節目でB♭ではなくAにベンディングしている部分があります。
これは要はブルースですね。Miではなくmeにすることで、独特のアンニュイさが出ています。
そのバックのコードも短調由来のコードなので違和感なくフィットするということです。
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Bメロ
印象
Bメロは短めに構成されていますね。
「立ち止まる」印象から「でもワクワクが止まらない」「弾ける」、「走り出す」という印象を持ちました。
前半が何か闇を抱えている、奈良田愛パート。
後半が渡辺さらさを現しているようなイメージです。
分析結果
Bメロにありがちなリズム半テンにより、「立ち止まる」という印象でしょうね。
進行はIV-V-IIIm-VImの王道進行です。
「でもワクワクが止まらない」というのは、これはもうスネアのアレンジによるものでしょう。
マーチのような連打が気持ちを抑えられないイメージの演出として最適です。
「弾ける」も同様にドラム由来。「ド・ド・パーン ド・ド・パーン 」というリズムが花火を連想させるためです。
ここでさきほど紹介した、IV-V-♭VI-♭VIIという進行が出てきますね。
メロディーは所々で半音の動きでマイナー感も出しつつも、多くはメジャーペンタでダイナミックに動きます。
サビ
印象
サビはとても長い小節数ですね。
アニメソングというのは90秒に収めなければならないため、テンポは速く、サビは長めというものが多いです。
ここでは「元気いっぱい」、「走り続ける」という印象から始まり、
途中、「一歩一歩」と感じさせる部分がありました。
その後「躍動する」「切ない」「苦難」というイメージの連想から、
「あきらめない」、「花火のように」、「はかなくとも」といった喜怒哀楽が想像され、
最後の6小節で「それらの感情もすべて大事にして」
「階段を登って目指す夢」というイメージを感じました。
分析結果
久々にIから始まるサビです。
スネア主体のリズムは独特の元気さがありますよね。それが印象の由来でしょう。
5小節目の「走り続ける」は、IV-I/IIIというサブドミナントからトニックの展開系に動く部分が、続いていく印象になることに由来していると思います。
一歩一歩はBDの4つ打ちによるものですね。
最初は中があまりよくなかった二人が足並みを揃えていく感じです。
9小節目の「躍動する」はベースのアレンジによるものでしょう。
サビのリフレインからベースが動き始めるのは、ぼくたちのリメイクのOP曲「ここから先は歌にならない」でも聴くことができます。
なんかベースが動くだけでなんかとっても心が躍るんですよね。
この記事は TVアニメ「ぼくたちのリメイク」のOP曲が知りたい 「ここから先は歌にならない/Poppin’Party」がどのように作られているか知りたい 方に向けて書いています。 ぼくたちのリメイ[…]
「切ない」の正体はパッシングディミニッシュ 。
「苦難」の正体がマイナーコード2連続による憂鬱。
続くコードがIVであることから「終わらない」=「あきらめない」。
「花火のように」はやはりドラムのタムとシンバルによる「ド・ド・パーン ド・ド・パーン」の影響。
その後VImに解決するため、暗い印象として「儚くとも」。
後に続くIV-V-IIIm-VIm進行は、またリズムが半テンになります。
これまでの感情を振り返るような演出に感じたのでしょうね。したがって、「それらの感情もすべて大事にして」。
最後は、1小節ごとにコードが変わるため、「階段を登って目指す夢」ということでした。
まさに渡辺さらさがと奈良田愛が一歩一歩階段を上り頂点を目指すことが表現されている、素晴らしい楽曲です。
心揺さぶってくれた方々に本当に感謝!
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まとめ
いかがでしたでしょうか?
ギタリストらしい、シンプルな構成ながらも劇中の登場人物の心情になぞらえて滑らかに進行するコードに、
ときにダイナミックに、ときに繊細に動くメロディー。
かげきしょうじょ!!ということで、もっと塚っぽいOP曲なのかと思ったら、とても爽快な曲でした。
その分、エンディング曲がもろに塚っぽくて今度分析してみたいと思います。
コミックスは完結しているようなので、結末が楽しみです。